中手骨が折れた

掌の骨のことを「中手骨」(ちゅうしゅこつ)というらしいのだけど、その中手骨が折れた。折れた原因は、本当に恥ずかしいことなんだけど、壁ドン。と言っても、「男性が女性を壁際に追い詰めて手を壁にドンと突く行為」ではなく、「壁を叩きたくなるほどの不満や憤りを感じた時など、腹が立った時に壁を殴る行為」のほうの壁ドン。力任せに2回ほど右の拳で壁を殴った。かなり痛かったけど、耐えられないほどではなかったので、その日はそのまま就寝。
2日目。指は普通に動く。ただ、握力がほとんど出せない。数百グラムのものでも掴んで持ち上げることができない。でも、車の運転もできるし(主に左手でハンドル操作)、買い物もできる(買い物かごを右の手首にかけて、左手で物を取る)。マウスの操作もタイピングもほとんど握力を必要としないので、パソコンも問題なく使える。一応、湿布を貼って、痛み止めにバファリンを飲んで、様子を見ることに。
3日目。湿布をはがしてみると、右手は腫れあがって、血管とか筋とか浮き出ていない赤子のような手になっていた。湿布を貼っていると、同僚や上司に「どうした?」と間違いなく聞かれて面倒なので、何もつけないで出勤。幸い、重いものは持たない仕事なので、何の支障もなく、普通に仕事をこなす。多少支障があるのは私生活のほうで、左手でしか頭を洗えないし、左手だとうまく歯磨きできない。
6日目。握力はだいぶ戻ったものの、強い力はまだ出せない。鋭い痛みはないのだけど、右手の奥のほうに鈍い痛みがある。少しずつ腫れは引いてきたが、右手の色が左手の色と明らかに違う。手の甲は全体的に黄色っぽく、中指、薬指、小指の付け根が不自然に赤い。壁を殴った時に壁に直接当たったのはこの部分なので、あざができてもおかしくはないのだけど、5日経って青あざではなく赤いあざというのはおかしいし、その部分を触っても全く痛くないのもおかしい。掌のほうを見ると、掌の中央付近に青あざができている。壁に直接当たってない部分にあざができているのもおかしい。ネットで調べてみる。拳の強打で生じる骨折を「ボクサー骨折」というらしい。折れるのは前述の中手骨。中手骨が損傷して、内出血を起こしたと考えれば、掌の青あざの説明がつく。その内出血が指の付け根にまで及んだと考えれば、不自然な赤いあざも説明できる。そして決定的なのは、手を握った時にできる拳の山。これを「ナックルアーチ」と呼ぶらしいのだけど、中手骨が折れるとナックルアーチがなくなるらしい。自分の右手を握ってみると、薬指と小指のナックルアーチがない。ここで初めて「ああ、折れていたんだ」と。病院に行こうかどうか迷ったけど、整復(折れた骨を正しい位置に戻すこと)が必要なほどずれているようには見えないし、何より仰々しく固定されたりすると目立ってしまうので、放置することに。
10日目。相変わらず指の付け根の赤いあざと掌の青あざは残っていて、痛みも残る。在宅時は湿布と鎮痛剤で鎮痛を試みるも、これらは対症療法に過ぎず、治癒を早める効果はないらしい。
15日目。中指と薬指の付け根の赤いあざはなくなった。小指の付け根の赤いあざと掌の青あざはまだ残っている。拳を握ってみると、ナックルアーチが戻っていた。
20日目。ようやくあざが消えた。握力もほとんど戻った。ただ、少し痛みが残る。手の甲の小指側がわずかに膨らんでいる。膨らんでいるといっても、左手と見比べてみなければわからない程度。折れた骨が曲がった状態でつながったのか、仮骨形成によるものか。
25日目。まだ少し痛い。完治までには時間がかかりそう。


というわけで、人生初の骨折体験記でした。結局病院には行かなかったので、レントゲンで折れたことを確認したわけではないけど、状況から考えてほぼ間違いなく骨折。以下、まとめ。
・拳で壁を殴ると、中手骨(掌の骨)が折れる
・意外と痛くない(我慢できないほどではない)
・拳の山(ナックルアーチ)がなくなる
・内出血(あざ)が2週間以上治らない
この体験記は「病院に行かなくても大丈夫」ということを意図するものではありません。ネット検索でこのページにたどり着いた人には、できるだけ早めに病院に行くことをおすすめします。